知っておこう!高齢者の転倒予防トレーニングの実際

ある調査によると、高齢者の転倒発生の7割が屋内で発生しており、その約半数は寝室>居室>台所>浴室>階段の移動中につまずくとされています。私達スタッフは高齢者に対してどのようなトレーニングを行えば良いのでしょうか。今回は、転倒予防のための高齢者トレーニングの実際について詳しくご紹介していきます。

高齢者の転倒の「7つの要因」とは

高齢者の方はどうして転倒してしまうのでしょうか?
トレーニングの前に、まずは主な要因について学んでいきましょう。

高齢者の転倒の要因として、大きく分けて7つ要因が考えられます。

【高齢者の転倒の要因】
1)筋力低下
加齢に伴い高齢者は筋力が低下し易くなります。特に下肢筋力においてはバランス能力の低下との相関があるとされており、筋力低下を防ぐことは転倒予防においても重要な要素となります。

2)過去の転倒歴
過去に転倒をしたことがある方は、転倒を繰り返しやすいので注意が必要です。なぜ転倒をしたのかを分析する必要があります。

3)歩行能力低下
歩行能力とはバランスや体力、注意力など全ての要素があります。「歩いている時に転倒した」と聞いた場合には、長い時間を歩いて転倒したのか、ものにつまづいて転倒したのか、滑って転倒したのかなど注意深く、聞いてみてください。必ず原因があるはずです。

4)バランス能力の低下
高齢者の方の筋力向上をすれば、転倒がなくなると考えている方も多いですが、筋力低下は転倒要因の一つに過ぎません。また、筋力が上がればバランス能力も上がると思っている方も多いとは思いますが、バランス力の向上のためにはバランストレーニングが必要です。この辺りを整理し、しっかりと覚えておきましょう。

5)歩行補助具の使用
押し車や杖などの誤操作で転倒してしまう高齢者の方も多くいらっしゃいます。本来はご本人様の安全を守るための道具ですので、操作方法が正しく理解できているかなどの確認を怠らないようにしましょう。
また、杖の杖先ゴムは経年劣化をしますので、定期的にチェックを行い対象の方を転倒から守りましょう。

6)視力障害
加齢に伴い視力や視野、色の識別などが困難になることがあります。自分と手すりの距離を間違えて前方に転倒してしまったり、段差がないと思っていたが実際には段差があり、つまずいてしまった。こういったことはよくあることです。
その方の視力がどの程度のものなのか、スタッフ間でしっかり共有する必要があるでしょう。

7)dual-task遂行能力(二重課題)の低下
例えば、コーヒーカップを持ちながら、歩く。おしゃべりをしながら、歩く。高齢者になると「XXをしながら、YYをする」などの2つを同時にする能力が低下することがあります。
この辺りができるかなどをしっかりとチェックしていきましょう。

高齢者の転倒予防は40代から!?

高齢者のための転倒予防トレーニングは中臀筋の筋力アップやバランス訓練、ステップ訓練、二重課題訓練など様々な報告がされていますが、まずは高齢者の筋力について学んでいきましょう。

山田(2007年)らの1006名の筋量分布の調査によると、男性は50歳代に顕著に筋量が低下(特に太ももあたり)し、女性では40歳代以降に低下していると報告しています。

このことからも、筋力低下においては高齢者といわれる65歳以上より遥かに早いということがわかります。

つまり、筋力・体力トレーニングは40〜50歳代から意識的に取り組んでいく必要性があるのではないでしょうか?

早期から筋力トレーニングに取り組み筋力の低下を防ぐことで転倒を早期に予防してきましょう!

山田 陽介 体力科学 Vol. 56「15~97歳日本人男女1006名における体肢筋量と筋量分布」
2016年11月4日アクセス

高齢者の筋力トレーニングのポイントとは

厚生労働省(2013)は65歳以上のトレーニングを安全かつ効果的に行うために3つのポイントを示しています。

1.3METs以上(中等度・強度のスポーツ類)の運動を150分以上/週
2.3METs未満の運動を300分以上/週
3.基準値の 50~75%の強度の運動を 30 分以上/週 2 日以上

また、筋力トレーニングのオススメの方法として、10RM(1RMの80%以上)×10回×3セットを2〜3回/週を3ヶ月以上継続すると良いとされています。

これは高齢者においてもしっかりと負荷をかけた運動を行うことが重要であることを示しています。

但し、要介護高齢者の場合は、緩やかで6ヶ月以降に徐々に増加する傾向とされています。高齢者は様々な病気に罹患していることが多いため専門家の指導の下、取り組むことをお勧めします。

厚生労働省「健康づくりのための身体活動基準 2013 」
平成28年10月1日

高齢者の「散歩の効果」とは

65歳以上の方にとって歩くことはどういった効果があるのでしょうか?

谷川ら(2013年)によると"健忘型軽度認知機能障害高齢者が身体活動量を増加させることで記憶機能低下を抑制し、認知症の進行を予防できる"と示唆しています。

つまり散歩は認知症予防に効果が期待できるのです。

その他にも75歳以上の高齢者では、身体活動量と下肢筋力、歩行速度は膝関節伸展筋(大腿四頭筋)と相関があるとされており、散歩は心身ともに良いということがわかります。


では、実際に散歩する場合、何歩程度の運動が望ましいのでしょうか?

介護度と身体活動量(歩数)の関係性を見てみると、介護保険での認定を受けていない方であれば1日に「7,000〜8,000歩以上」歩くことが望ましいとされています。

また、厚生労働省健康日本21によると、1日平均歩数の基準値は男性8,202歩、女性7,282歩(平成9年度国民栄養調査)と報告されており、目安として+1,000歩の「一万歩」を目標歩数として推奨されています。

1日にプラス10分で約1,000歩を追加するように意識してみませんか?

谷川 貴則 日本理学療法学術大会 抄録集 Vol.40 「健忘型の軽度認知機能障害を有する高齢者の記憶機能と身体活動量の関連」
2016年11月21日アクセス

Dual-task遂行機能課題とは?

転倒予防トレーニング7つ目のポイントに「Dual-task(二重課題)」の記載があったことを思い出してください!どんなものだっけ?と思われる方は、是非冒頭の方に戻っていただき、チェックしてみてください。

そうです!二つ以上のことを同時にする能力のことです。

ここでは、現場で簡単にできるチェック方法をご紹介します。
例えば、以下の4つを高齢者の方々に行ってみてください。1つの項目でも失敗があれば、このDual-task遂行機能が低下しているかもしれませんので転倒に注意が必要です。
 
1)何も持たずに椅子から立ちあがる
2)何も入っていないコップをもって、真後ろに方向転換する
3)水が入ったコップを持って、こぼさずに歩く
4)急いでいる時に敷居やカーペットなどの段差につまづくことがあるか

転倒予防のためのDual-task訓練とは

[画像タップで詳細表示]

それでは転倒予防訓練として、Dual-task訓練を行ってみましょう。

こちらの運動はバランスボールを活用した二重課題です。

認知機能を二重課題として、計算問題を行いながら歩行するなども訓練などをすることもトレーニングの要素につながります。意識して行ってみてください。

転倒予防のためのDual-task訓練|その他

山田(2012)は、二重課題の訓練として以下の訓練も推奨しています。

これらのエクササイズは、マークの順番に渡り歩いたり障害物を回避したりすることで、複数の課題化の中でも障害物へ注意が向けられる能力を鍛えることができます。

転倒予防に有効なエクササイズの1つとして覚えておきましょう!

1)Dual-task exercise
2)Trail Walking exercise
3)Multi Target Stepping Test

山田実「転倒予防のための複数課題条件下での注意運動介入方法の開発」
2016年9月20日アクセス

高齢者のトレーニング「足の指」

[画像をタップして詳細表示]

足の指のトレーニングは、椅子に座って取り組める安全なエクササイズの1つです。

加齢に伴い、外反母趾や扁平足など足の指の変化が目立つようになります。足の指は、床を蹴ったりバランスを取る際に重要な部位です。

また、下半身のむくみなど血流の循環にも貢献してくれる部位ですのでぜひ取り組んでおきましょう。

高齢者のトレーニング「つま先上げ」

[画像をタップして詳細表示]



つま先上げは、前脛骨筋といわれる筋肉を鍛えることができます。

一般的には歩行の際に、つま先を上げたり太ももに力を入れやすくするために働く筋肉でつまづきを予防したりするといわれています。

また、高齢になると足関節でバランスを取ることが苦手になります。バランストレーニングの1つとして是非取り組んでいただきたいメニューです。

いかがでしたか。今回は「高齢者トレーニングの実際)として評価方法から運動方法をご紹介しました。高齢者のトレーニング方法を理解し、少しでも根拠のある運動を選択し、運動指導をして頂ければ幸いと思います。
「Selfbox」では、今回ご紹介した運動をまとめたり、ボタン1つで印刷することもできます。セルフエクササイズの資料としてお渡ししていきませんか?
今なら、無料会員登録で50個まで運動をまとめることができます!

▼詳しくは下記の【セルフボックスで何ができる?】をご覧ください。

この記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。この記事の情報を用いて行う行動は、利用者ご自身の責任において行って頂きますようお願い致します。
この記事をお気に入りに保存する
関連する記事のまとめ
Rehab for JAPAN
ADLとはどんな意味?代表的な2つのADLの評価法をご紹介します
ADLとはどんな意味かわからない、どうやって評価したらいいかわからない方はいませんか?ADLとは、日常生活に必要な動作を指す指標です。今回は、ADLについて類似するIADLとの違いやADLを評価する「FIM」「BI」の...
>続きを見る
Rehab for JAPAN
バーセルインデックスの評価と採点方法で知っておきたい基礎知識
ADLを評価するバーセルインデックス(BI:Barthel Index)の評価項目や採点方法がわからない方はいませんか?バーセルインデックスは、日常生活動作を把握するための評価で、全10項目を100点満点で採点します。今...
>続きを見る
Rehab for JAPAN
高齢者向けボール体操 全14種|イスに座ってできる体操方法をご紹介
ご高齢者にとってボール体操は、身体に負担が少なく、怪我をする心配がない安全な体操です。また、子供の頃に手毬(てまり)などで遊んでいたため、馴染みのある道具でもあります。今回は、ご高齢者や車椅子の方...
>続きを見る