個別機能訓練加算Ⅱの実践プログラム | 食事動作の獲得を目指して


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通所介護での個別機能訓練加算Ⅱの目標設定として食事動作の獲得を目指したいと思っている方はいませんか?食事は、衣食住という言葉があるように人間が生活していく上でなくてはならないもので、家族や友人との交流や楽しみの場としても重要な活動です。今回は、食事動作の獲得を目指した個別機能訓練加算Ⅱの計画書の記載方法から実践プログラムを事例を交えてご紹介します。

個別機能訓練加算Ⅱのプログラムとは

個別機能訓練加算Ⅱでは、食事、排泄、入浴などの日常生活活動(ADL)や調理、洗濯、掃除などの家事動作(IADL)への機能訓練や、趣味やコミュニティなどの社会参加といった働きかけをすることでご高齢者の充実した生活を支援していきます。

また、機能訓練指導員がご利用者様へ個別の関わりを必須としているわけでなく、同じ生活目標を持つ方であれば「5名以下」の小集団として指導することもできます。

マンツーマンの指導も大切ですが、同じような悩みを持つご利用者様同士が、お互いに励ましあったり成功体験を共有しながら機能訓練に取り組むことで、生活に自信をつけたり、困った時の相談相手や心の支えになることもあります。できることなら1人よりも2人、2人よりも3人で、機能訓練に励める環境をセッティングしていくことも重要です!


個別機能訓練加算Ⅱでは、生活目標を達成するために必要なプログラムを立案する必要がありますが具体的にどのようなプログラムがあるのでしょうか?

「基本動作」「日常生活動作」「家事動作」「趣味・余暇活動」「社会参加」の5つの項目に分けてプログラムをご紹介します。


【基本動作に対するプログラム】
❶寝返り訓練
❷起き上がり訓練
❸立ち上がり訓練
❹床からの立ち上がり訓練

【日常生活動作に対するプログラム】
❶食事動作訓練:箸の使用、姿勢保持訓練等
❷整容動作訓練:歯磨き、洗顔等
❸排泄動作訓練:ズボンの着脱、排尿コントロール、便座からの立ち上がり等
❹更衣動作訓練:上着、ズボンの着脱、座位バランス等
❺入浴動作訓練:洗体、洗髪、浴槽またぎ等

【家事動作に対するプログラム】
❶掃除動作訓練:立位バランス、掃除機の操作等
❷洗濯動作訓練:衣服の取り出し、洗濯物干し等
❸調理動作訓練:買い物、包丁の使用、火の取り扱い、注意機能、記憶等
など

【趣味・余暇活動に対するプログラム】
❶囲碁・将棋:長時間の座位保持、手指の巧緻性、認知機能や記憶等
❷編み物・手工芸:物品の使用、手指の巧緻性、見当識等
❸カラオケ:発声、肺活量、姿勢保持、記憶等
❹パソコン:パウスの操作、キーボードの操作等
❺園芸:不整地での歩行能力、スコップなどの道具操作、見当識等
など

【社会参加に対するプログラム】
❶町内会の集まり:主に体力やバランス能力、階段昇降等
❷食事会
❸社交ダンス
など


個別機能訓練加算Ⅰ・Ⅱの算定要件や計画書の作成方法などについては、別記事でもご紹介していますので詳しくはこちらをご覧ください。

【関連記事】個別機能訓練加算とは
個別機能訓練加算Ⅰ・Ⅱの算定要件からアセスメント、計画書作成、実践プログラムまで徹底解説します!

個別機能訓練加算Ⅱとしてなぜ食事が重要なのか?

では、なぜ食事は個別機能訓練加算Ⅱとして重要なのでしょうか?

皆様もご存知の通り、食事は日常生活動作の中でも生命維持に必要な基本的な生活行為動作です。また、スプーンや箸などの食事道具の操作や食事環境への適応、食べ物に対する知識、食卓のマナーなど文化的なスキルも要求される重要な活動です。

一方で日頃、運動やリハビリをしたくないと訴えがあるご利用者様においては、お腹がすくなどの欲求(生理的欲求)が高い「食事」においては、自ら意欲的に取り組んでいただけることも多い活動です。


高齢者においては、年を重ねるにつれ、身体能力の低下や日常生活に制限を感じることも多くなっていきます。食事の能力の低下は、個人の自尊心だけでなく、楽しみや外出の機会を減らすことにもつながります。

伊勢崎らは、“生活満足感にはADLの食事動作が強く影響しており、各因子の影響を考慮したとき、食事動作ができるほど生活満足感が高かった。食事を自力で摂る事ができるという喜びの他に家族、親戚や親しい友人等の生活を共有する人達との関わりを保持していく「場」として、介助されずに楽しみながら食事を摂れるということが、ひとつの社会活動として生活満足感に影響していた”と報告しています。

このことからも、ご高齢者にとって「好きな食べ物がいつまでも自分で食べれる」ということは、生活の質(QOL)を高めるために最も重要であるといえるのではないでしょうか?


--引用論文--
伊勢崎 美和「高齢患者のQOLとADL(日常生活動作)との関係―主観的幸福感に焦点をあてて―」
http://www.lib.yamanashi.ac.jp/igaku/mokuji/kiyou/kiyou16/image/kiyou16--071to075.pdf


▼高齢者の生活の質を高めるQOLの考え方についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事がオススメです。

【関連記事】QOL(生活の質)とは|医療・介護に役立つQOLの考え方と評価方法
ご高齢者が望む生活を支援する上で重要なQOLの考え方について簡単に解説します♬

個別機能訓練加算Ⅱの事例紹介|目標設定の記載例

では早速、食事動作の獲得を目標としたEさんの事例をご紹介します。


【事例】
Eさん(78)男性。定年まで妻と県外で過ごされていましたが、妻が亡くなってからは娘夫婦と同居。20XX年に多発性脳梗塞を発症。入院中も右半身に痺れや動きにくさを感じていましたが、毎日のリハビリに励んだお陰で、3ヶ月後には娘夫婦宅に退院することができました。現在も右手足に軽度の麻痺は残っているものの家の中では杖を持って歩くことができるようになりました。その後、ご家族から「屋外の歩行の体力をつけて欲しい」との希望でデイサービスを利用し始めました。

デイサービスでは、筋力アップや屋外歩行訓練を実施していましたが、Eさんとお話する中で「娘夫婦と食事に行きたいけど、食べ方が不恰好なので周りの目が気になる」ということを耳にしました。



このようなEさんの場合、どのような「個別機能訓練」を行っていけば良いのでしょうか?

Eさんの個別機能訓練計画書の目標設定の記載例をご紹介します!


【Eさんの個別機能訓練計画書の記載例】
■本人の希望:娘と外食に行きたい
■長期目標:自宅での箸やスプーンを使用して食事ができる
■短期目標:両手を活用しながら正しい姿勢で食事摂取ができる


個別機能訓練加算Ⅱとして計画書を作成する場合は、ご本人の主体的な希望やケアプランを確認した上で目標を立案しましょう。今回は、あくまでも事例として記載していますが、目標やプログラム立案は、それぞれのケアプランやご利用者様への情報収集、評価を行なった上で設定してください。


▼個別機能訓練加算の目標設定の仕方がいまいち分からない方、もっと詳しく学びたい方はこちらの記事をご覧ください。

【関連記事】個別機能訓練計画書で悩む!?目標設定の仕方・書き方とは
個別機能訓練計画書の目標設定の仕方、書き方について詳しく解説します♬

個別機能訓練加算Ⅱのプログラムの項目とは

個別機能訓練加算Ⅱの目標として「食事」を立案する場合は、摂食・嚥下や物品の使用、姿勢、食事の準備・片付け、文化的なスキルなど段階的に評価を行い、短期目標やプログラムを立案していきます。

Eさんの事例の場合、どのような個別プログラムを立案できるでしょうか?いかにご紹介します。

【Eさんの個別機能訓練加算Ⅱのプログラム項目】
①食事の認識訓練
②座位での体幹トレーニング
③セラプラストを活用した手指の訓練
④セラプラストを活用した箸の訓練
⑤スプーンの操作訓練
⑥箸・スプーンでの口元まで運ぶ訓練
⑦咀嚼訓練
⑧嚥下反射訓練
⑨両手での食事動作訓練


食事を楽しむためには、大きく9つの工程が必要となります。この9つの工程は、ご利用者様の能力に合わせて「短期目標」や「プログラムの立案」する際に参考にしていただきたいと思います。

※脳血管障害などによって利き手に重度の運動麻痺を呈した場合、利き手交換を余儀なくされた場合は、今回の訓練は対象外となりますので予めご了承ください。


▼個別機能訓練計画書の基本情報やプログラムの立案など、そもそもの書き方が分からない方、これから作成していきたい方はこちらの記事がオススメです。

【関連記事】はじめて個別機能訓練計画書を作成する人のための4つのポイント!
個別機能訓練加算を算定するために必要な個別機能訓練計画書の書き方を丁寧に解説します。

個別機能訓練加算Ⅱプログラム|①食事内容を認識できる

それでは、Eさんの個別機能訓練加算Ⅱの実践プログラムをご紹介していきます。


まず、取り組みたいプログラムとして「食事の認識訓練」が挙げられます。食べ物を認識するなんて当たり前と思う方も多いのではないでしょうか?

介護の現場では、スタッフの配置も少なく配膳の際に「今日の献立」を伝えれていないことも多くあります。

この食べ物を認識するという行為は、食べるための準備期間として非常に重要になります。人間の脳は、食べ物を認識することで、過去に食べたことのある食べ物と比較検討をし、その食べ方の判断や味の予測を行います。その予測と共に生理的な反応として唾液や消化器官の準備が始まります。

梅干しを見るとヨダレが大量に出るのはこのためです。

多発性脳梗塞を発症したEさんの場合、舌や嚥下機能が低下して誤嚥性肺炎などを合併することが懸念されます。そのためこの食べ物に対するイメージを持つことで、唾液や消化器官の生理的な反応を促すことができるので「食塊を形成し、食べ物を飲み込みやすくしたり」「口腔内の自浄作用」にも効果が期待できます。


【プログラム内容】
食べ物クイズ

【プログラムの手引き】
食べ物を認識する際は、そのほどんどが視覚が占めており、その次に聴覚、嗅覚、触覚、味覚になります。そのため、絵カードなどを活用してクイズ形式でその食べ物がどのような色をしているのか?どれくらいの大きさか?匂いは?硬さは?味は?などの質問をしていきことで食べ物に対するイメージや認識力を鍛えていきましょう。

個別機能訓練加算Ⅱプログラム|②椅子に正しく座る

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Eさんは、椅子に座った時に円背や右肩下がりの姿勢になってしまうという課題がありました。

正しく椅子に座ることは、安定して食事を食べることができるだけでなく、スプーンや箸を使う腕も使いやすくなる効果が期待できるので「座位での体幹トレーニング」を2種類提案しました。

このエクササイズでは、つま先重心と腹筋群を意識して鍛えることで体幹の安定性を高める効果が期待できます。安定した座った姿勢を獲得するための5つのポイントとして、「足底が床に設置しているか」「つま先に体重が乗っているか」「骨盤が起きているか」「体幹が保持できるか」「顎が引けているか」を確認しておくことも良いでしょう。

また、食事時間内に体幹保持が難しい方には、背中やお尻の後面にタオルを置くことで身体が安定しやすくなります。身長に低いご利用者様に対しては、椅子の大きさや高さを変更することもお勧めします。





【プログラム内容】

椅子座位を安定させる体幹エクササイズ


【プログラムの手引き】
つま先に体重を乗せるように体を前方に倒し、踵上げを行うことで体が連動して正しい姿勢を保持しようとしてくれる効果が期待できます。また、骨盤が後方に倒れてしまうと猫背の姿勢となりやすいため前方方向に起こすイメージで運動を行うように指導しましょう。


個別機能訓練加算Ⅱプログラム|③箸・スプーンを持つ

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Eさんの右手の麻痺は、軽度ではあるものの親指や人差し指を使った細かな運動に課題がありました。また、
他人の目が気になる性格のEさんのため、箸やスプーンを持つような実践的な訓練をいきなり提案することはせず、まずは段階的に訓練を行なっていくことにしました。

そこで提案したのが「セラプラストを活用した手指の訓練」の2種類です。


【プログラム内容】
セラプラストを活用した手指のエクササイズ+把持訓練

【プログラムの手引き】
箸の使用は、主に親指と薬指は固定の役割として、人差し指と中指はつまむ役割として働きます。スプーンの使用の場合は、親指から中指までの3指で挟む役割として働きます。そのため「親指で潰す訓練」と「3指で丸める訓練」に分けてエクササイズして行きましょう。


※重度の脳梗塞後遺症などの影響により箸やスプーンを握ることができない方に対しては、「万能カフ」や「太い柄スプーン」「自助箸」など自助具を使用していくこともおすすめします。

【自助具】
⑴万能カフ
⑵太い柄スプーン
⑶自助箸(箸ぞうくん・ピンセット箸)

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この記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。この記事の情報を用いて行う行動は、利用者ご自身の責任において行って頂きますようお願い致します。
 
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